【基礎編】ベトナム駐在が決まったら知っておくべき経済知識

【駐在員必見】ベトナム経済入門 ベトナム
【駐在員必見】ベトナム経済入門

ベトナムに赴任することになったら、あるいは自分の会社がベトナム進出を検討するなら現地の基礎的な情報を把握したいですよね。

本記事では、ホーチミン在住の筆者がベトナム経済について抑えておくべきポイントをまとめました。

今回の記事を読めば、ベトナム経済の基礎知識をカバーすることができます。赴任前は何かと忙しいと思いますが、しっかりと準備していきましょう。ベトナム地理について知っておきたい方は【基礎編】ベトナム駐在が決まったら知っておくべき地理の知識もご参照ください。

ベトナムの必須知識【経済編】

【ベトナム概要】

  • 名称…ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)
  • 面積…32.9万平方キロメートル(日本の0.9倍)
  • 人口…約9,762万人(2020年, 越統計総局)
  • 首都…ハノイ(人口約805万人, 2019年時点)
  • 一人あたりGDP…3,498USD(2020年, IMF推計)
ハロン湾(ベトナム北部)
【世界遺産】ハロン湾(ベトナム北部)

ベトナムの経済成長

まずはベトナムの経済成長を見ていきます。
ベトナムは近年、平均7%の実質GDP成長率を達成していましたが、新型コロナウイルスの影響を受け2020年の実質GDP成長率は2.9%でした。それでも各国マイナス成長のなか、底堅い成長力があると言えます。2021年の上半期は5.6%と回復基調にあると言えます。(JETRO, 2021年より)

出典:世界銀行

成長の背景として、
・外国資本による投資が活発(後述)
・優秀な労働力が豊富
・安定した政治・社会
・1億近い人口かつ平均年齢31歳という若さ
などのポイントがあります。

近年では生産拠点としてだけでなく消費市場として期待されています。

ドイモイ(刷新)政策とは?

ドイモイ政策とは、ベトナムが1986年に導入した大規模な方針転換です。
政治的には社会主義体制を維持しながら、経済的には資本主義を導入するというもので、社会主義国のなかでもベトナム固有の政策でした。これを機に、グローバルに市場を開放。外国資本を誘致して経済を立て直す方針に転換しました。

政策の背景は、
・1960年代から続いた戦争(ベトナム戦争、ベトナム・カンボジア戦争、そして中越戦争)で国際社会から孤立していたこと
・国内の計画経済が機能せず、国家予算の大赤字に加えて国民生活が困窮していたこと
です。

ドイモイ政策による外資誘致は経済の急速な拡大を実現しました。
その後、1995年には米国との国交正常化、ASEAN加盟が実現します。これを機にますますグローバルに注目を集め、大型投資が本格化していきました。

ペンタ
ペンタ

ベトナム語で「Doi」は「変化」、「Moi」は「新しい」という意味です。

チャイナプラスワンとは?

中国への一極集中により高まるチャイナリスクを他国(主に東南アジア)へ進出することでリスク分散する考え方です。

ベトナムは2010年頃から中国の人件費高騰を受けて注目が高まりました。さらに数年前からは中国の政治・経済リスク回避を目的とした受け入れ先として注目されています。

最近では、米中貿易摩擦を理由にした移管計画が増えています。2018年春〜2019年夏には82件の移管があり、うちベトナムへの移転が最多で、全体の3割を占めています。

ペンタ
ペンタ

チャイナリスクとは…
知的財産権の侵害や模倣品問題、行政手続きの不透明性、ストライキ・賃上げなどの労務問題、輸出制限や高関税、中国製品・食品の安全問題などです。

【ベトナムトップ財閥】ビングループとは?

ビングループはベトナム最大手のコングロマリット(複合企業)です。
不動産事業を軸に、スーパーやコンビニといった小売、ホテル・リゾート、航空、病院、自動車、教育事業などを多角展開しています。ホーチミンやハノイなどの中心地で大規模不動産事業を手掛け、そこで得た利益を別の事業に投資するスタイルで拡大してきました。
ベトナムにいると、右を見ても左を見てもビングループに囲まれている感覚があります。

最近のトピックとしては、ビングループ傘下で自動車の製造・販売を手掛けるビンファースト社がEVの製造・販売に乗り出しました。自動車事業への参入は2019年と歴史は浅いものの、欧州での受注を開始、既存メーカーのライセンスを活用するなどして、先行する米テスラ社の半額程度で販売する戦略をとっています。(日本経済新聞, 2022年1月25日)

日本との繫がり

ベトナムは基本的に親日国であり、友好的と言われています。
政府同士の繫がりや日系企業の進出など、歴史的に積み上げられた信頼関係のもとに成り立っていると言えます。それぞれポイントをおさえておきましょう。

日本の対ベトナムODA(政府開発援助)

2000〜2009年までの10年間でおよそ1535億ドルのODAを実施しています。
具体的には、カイラン国際港、ハノイーハイフォン間幹線道路、ハイバン峠トンネル、ダナン国際港、ホーチミン市東西幹線道路などの大規模インフラ整備の支援実績があります。

累計で220億ドルを超えるODA実績があり、日本はベトナム向け最大級の提供国の一つとなっています。(2016年、ベトナム計画投資省)

対ベトナム直接投資

日本の対ベトナム直接投資はコロナ以降額が減少しているものの、世界の中で上位を占めています。

2020年、日本の対ベトナム直接投資額は認可ベースで約23.7億ドル。2019年は約31.9億ドルです。
ちなみに2017年、2018年(投資額は約83.4億ドル)は2年連続で1位でしたが、コロナ禍の影響で2019年以降は首位の座を逃してしまいました。(JETROなど参考)

業種別にみると「製造業」が投資額の半分以上を占めており、トップです。近年では非製造業のベトナム進出が増えてきていることも注目です。

貿易について

ベトナムの2020年輸出額は約2,827億ドル(前年比7.0%増)、輸入は約2,628億ドル(3.7%増)。貿易収支は約200億ドルと5年連続の黒字となりました。(ベトナム税関総局より)

輸出相手国は1位アメリカ(約771億ドル)、2位中国(約490億ドル)、3位日本(約193億ドル)
輸入相手国は1位中国(約842億ドル)、2位韓国(約469億ドル)、3位日本(約203億ドル)
となっています。

日本の対ベトナム貿易の品目別シェアは以下の通りです。

輸出 機械類(43.2%)、鉄鋼(7.6%)、プラスチック(5.2%)、鉄鋼くず(5.1%)、科学光学器(3.5%)
輸入機械類(32.3%)、衣類(18.6%)、はきもの(5.0%)、魚介類(4.6%)、家具(4.3%)
参考)JETRO, 2020

まとめ

ベトナム経済は年平均7%のGDP成長率を誇り(コロナ前)、コロナ禍においてさえも2.9%の成長率を維持しています。成長の背景として、ドイモイ政策による市場の開放やチャイナプラスワンとしての魅力を紹介しました。

ベトナムに赴任される方の情報収集のお役に立てていれば幸いです。

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